空き家を売ったときの税金の特例とは?~相続した家屋に関する3,000万円控除の制度~
相続で空き家を引き継いだものの、管理が難しく売却を考えている方も多いのではないでしょうか。そんなときに知っておきたいのが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」という制度です。
この制度を活用すれば、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円まで控除される可能性があります。
父名義の不動産について、父、母と相次いで亡くなり、相続人である息子さんが相続してその空き家を売却する場合、いきなり息子さん名義に相続してしまうと、空き家条例がつかえないからです!
でも、被相続人が居住していたことが、要件となるので、数次相続の場合には注意が必要です。
今回はこの制度について、要点をわかりやすくご紹介します。
制度の概要
平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、一定の条件を満たして相続した空き家やその敷地を売却した場合、最大3,000万円の譲渡所得控除を受けることができます。
この特例を「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼びます。
注意
令和6年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円に減額されます。
対象となる家や土地とは?
1.被相続人居住用家屋
特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるものをいいます。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家屋
- 区分所有建物登記がされていない(マンションなどは除外)
- 相続開始時点で被相続人以外に住んでいた人がいないこと
なお、被相続人が介護のため老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になります。
ここで、わかりにくいかもしれませんが、「被相続人居住用家屋」とは、被相続人が所有していた家屋ということですので、被相続人名義で登記がされていたことを意味します。
具体的にいうと、父名義の不動産について、10年前に父が亡くなり、母が一人で住んでいたけれども母名義に相続登記をしないままに、2年前に母が亡くなり、その息子に直接相続登記をした場合に、既に父の死亡から3年経過しており、この制度の対象とはならないということです。制度の対象となるには、母名義に相続登記をしたうえで、息子へ相続登記をするという手続きが必要となります。
空き家特例がつかえない!しまった!と思ったときには、すでに不動産を売却し買主に移転登記がされていると思いますので、母名義に登記をすることはできないので、注意が必要です。
2.その家の敷地
その家が建っていた土地、またはその土地の権利も対象になります。ただし、相続開始時点で家の敷地として利用されていたことが条件です。
特例を受けるための7つの要件
この制度を使うためには、以下の7つの要件すべてを満たす必要があります。
① 売った人が相続人であること
まず大前提として、空き家やその敷地を売った人が、「相続人」または「包括受遺者」であることが必要です。
ここでいう相続人には、「死因贈与によって取得した人」も含まれます。
② 売却の内容と空き家の状態が一定の条件を満たしていること
売却する物件には、次のような要件があります。
● 相続した家屋や敷地を売却する場合
この場合、以下のすべてを満たしていなければなりません。
- 相続した家屋は、相続から売却までの間に、事業や賃貸、他人の居住に使われていないこと
- 売却時点で、耐震基準を満たしていること
つまり、相続してから誰かに貸したり、自分で住んだり、店舗として使っていた場合には、控除の対象にならないということです。
● 家屋を解体したうえで敷地を売却する場合
家屋を取り壊して土地だけを売る場合も、以下の条件があります。
- 家屋は、相続から解体までの間、事業・貸付・居住に使っていないこと
- 敷地は、相続から売却までずっと、事業・貸付・居住に使われていないこと
- 解体後から売却までの間も、新たな建物を建てたりしていないこと
つまり、誰にも貸さず、使わず、売るまで何もしていなければ、この条件を満たす可能性があります。
● 一部例外として、売却時に耐震改修や解体を行った場合
少し複雑ですが、売却の直後(その年の翌年2月15日まで)に耐震改修をしたり、家を取り壊した場合も認められるケースがあります。
この場合にも条件があり、
- 相続から売却まで、事業・貸付・居住に供されていないこと
- 譲渡年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たすように改修した、または全部解体したこと
という要件が必要です。なお、この条件が認められるのは令和6年1月1日以降に売却したものに限られています。
③ 相続開始から3年以内に売却すること
相続が開始した日から3年を経過する年の12月31日までに売却する必要があります。
つまり、タイミングを逃すとこの特例は使えなくなりますので注意が必要です。
④ 売却金額が1億円以下であること
売却価格が1億円を超える場合は、この特例を利用できません。
⑤ 他の特例を使っていないこと
たとえば、以下のような別の特例をすでに使っている場合には、この空き家特例は併用できません。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
- 収用による特別控除など
⑥ 同じ家や土地でこの特例を使っていないこと
この特例は1回限りの制度です。同じ被相続人から相続した空き家・敷地について、すでにこの特例を使っている場合は、再び使うことはできません。
⑦ 特別な関係にある人に売却していないこと
最後に、売却の相手が親・子・配偶者などの特別な関係者である場合は、この特例は使えません。
ここでいう「特別な関係」には、以下のような人たちも含まれます:
- 同じ家計で暮らしている親族(生計を一にする親族)
- 売却後にその家に同居する親族
- 内縁関係の相手
- 関連の深い法人など
つまり、身内や親しい関係のある人に売る場合は、この制度の対象外になります。
まとめ:空き家相続時には名義に注意を!
数次相続の際には、専門家にご相談ください。
足立区足立の司法書士金山友子事務所