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相続人が多すぎて話がまとまらない…そんなときに使える「相続分の譲渡」という方法


■ はじめに

昔の名義のまま放置された不動産、皆さんのご家庭にもありませんか?
「おじいちゃんの土地の名義がそのままになっている」「相続人が10人以上になっていて話がまとまらない」
そんな状態で困っている方も多いのではないでしょうか。

多数の相続人がいる相続手続きでは、全員の合意がないと遺産分割ができず、手続きが一向に進まないことがあります。
今回は、そうした状況を少しでも前に進める方法として、**「相続分の譲渡」**という考え方をご紹介します。


■ 相続分の譲渡ってなに?

「相続分の譲渡」とは、ある相続人が、自分の相続に関する権利(=相続分)を、他の相続人に渡すことです。

たとえば──

親が亡くなり、子どもが4人相続人だったが、そのうち1人が
「私は関わりたくないから、他の兄弟に任せる」
といって、相続分を兄に譲渡する。

こういったケースでは、遺産分割協議を進めやすくなることがあります。
「協力的な人」に相続分を集めて、協議の主導権を握っていくことができるのです。


■ 相続分の譲渡で気をつけたい2つのポイント

数次相続では、最初に発生した相続を「一次相続」、次に発生した相続を「二次相続」と呼びます。

一次相続の相続人が亡くなった場合は、本来その相続人が受けとるはずだった相続分を、二次相続の相続人が引き継ぎます。


同順位の相続人とは、一次相続の法定相続人同士、二次相続の法定相続人同士を意味します。

譲渡を受ける相手によって、税金の問題が発生することも

  • 同順位の法定相続人同士が無償で相続分の譲渡をするのであれば、基本的に贈与税の問題にはならないとされています。
  • しかし、異順位の無償の相続分の譲渡では、贈与税などの税務リスクが発生する可能性があります。

特に次のような例は要注意:

夫(正男)の父(義父)名義の土地について、夫が亡くなった後にその妻(幸子)が、義父の土地を相続したい場合

→ 幸子さんは義父の一次相続の法定相続人ではないということが、ポイントです。

原則として、不動産登記では一つの相続ごとに登記を行い、中間省略登記が認められるのは、中間の相続人が一人(遺産分割・譲渡等で一人になった場合も含む)の場合に限られます。

相続登記を一回でやるためには

  • この場合には、義父の土地を正男さんが相続し、それを幸子さんが相続する遺産分割協議を全員でおこなう。
  • 義父の相続に関しては、義父の法定相続人は、幸子さんではなく、正男さんに相続分の譲渡をし、正男さんの相続については、幸子さんに譲渡をする。


つまり、義父の相続について、正男さんに譲渡するのではなく、幸子さんに譲渡してしまうと、幸子さんは、義父の相続人ではないことから、

  • いったん義父の法定相続人の全員の名義で相続登記を申請し、
  • そこから幸子さんへの相続分の譲渡の登記を申請する必要があります。

その相続分の譲渡の登記の申請の際には、譲渡証明書が必要なのはもちろんのこと、登記申請から三か月以内の譲渡者の印鑑証明書の添付が必要であり、譲渡者から実印で押印した司法書士への委任状が必要になってきます。


よく、相続人が多数いるから、コツコツと一人ずつ相続分の譲渡を受けて、譲渡証明書も印鑑証明書ももらったのに、これでは相続登記ができないと司法書士にいわれた!ということがありますが、このような事情や背景があるからです。

(異順位への譲渡で、印鑑証明書が三か月以内でない、委任状がない等)

ただし、例外もあります!

平成30年3月16日法務省民二137号通知

「異順位の共同相続人の間で相続分の譲渡がされたあとに遺産分割協議が行われた場合における所有権の移転の登記の可否について」です。

甲不動産の所有権の登記名義人Aが死亡し,その相続人B,C及びDによる遺産分割協議が未了のまま,更にDが死亡し,その相続人がE及びFであった場合において,B及びCがE及びFに対してそれぞれの相続分を譲渡した上で,EF間において遺産分割協議をし,Eが単独で甲不動産を取得することとしたとして,Eから登記原因を証する情報として,当該相続分の譲渡に係る相続分譲渡証明書及び当該遺産分割協議に係る遺産分割協議書を提供して,「平成何年何月何日(Aの死亡の日)D相続,平成何年何月何日(Dの死亡の日)相続」を登記原因として,甲不動産についてAからEへの所有権の移転の登記の申請があったときは,遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力が生じ(民法第909条),中間における相続が単独相続であったことになるから,他に却下事由が存在しない限り,当該申請に基づく登記をすることができる。

遡及効の有無

遺産分割の効力は相続発生時に遡ってその効力を生じ、中間における相続が単独相続であったことになるからです。

相続分の譲渡は遡及効がなく、譲渡の時に効力が生じるので、そこに大きな違いがあります。

何代にもわたって相続が発生した数次相続については、権利関係の把握が難しいので、迷ったときには、専門家にご相談することをおすすめします。